乗鞍岳クマ襲撃事件。観光客が次々に襲われてターミナルは地獄絵図と化した。

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乗鞍岳クマ襲撃事件

 

2009年9月19日、岐阜県と長野県の県境にある乗鞍岳(のりくらだけ)で起きたツキノワグマによる襲撃事件。観光客10人が次々に熊に襲われて重軽傷を負う大惨事になった。

事件の収束:射殺

 

「クマの動物研究」では世界中で起きた動物による事件を日夜研究しております。

今日は12年前の日本で起きたクマ事件。

 

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クマ

乗鞍岳クマ襲撃事件だ。

 

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また…絶対怖いヤツじゃん!

 

「クマ」「事件」と聞くと目を覆いたくなるような残酷な結果になることが多い。ご多分にもれずこの事件も…。

なので閲覧には十分に注意してください。

※怖い話、血などが苦手な方はお控えください。

 

 

 

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またヒグマなの?

 

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いや、今日はツキノワグマだ。

 

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うっ…十和利山襲撃事件が…

 

日本には二種類のクマが棲んでいます。北海道のエゾヒグマと本州四国のツキノワグマ。

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ツキノワグマ:ヒグマよりも小柄、性格は臆病、木の実や山菜などが主食。

 

十和利山襲撃事件などの例外をのぞけば、お腹がすいたからといって人を襲って食べるような生物ではけして無いということ。

 

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でも襲ったんでしょ?

 

この乗鞍岳の事件では大人しいはずのツキノワグマがたった一頭で観光地を襲撃し、10人の人間に重軽傷を負わせました。

なぜ、そんなことになったのでしょうか?

 

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乗鞍岳クマ襲撃事件

 

2019年午後2:20頃。

岐阜県高山市と長野県松本市にまたがる乗鞍岳。その一山である魔王岳の登山口付近。

畳平バスターミナル(ひだ丹生川乗鞍バスターミナル)には当時連休中だったために当日は1000人以上の観光客が訪れていた。

 

その1人、68歳の男性Aは妻と山を訪れ、風景をカメラにおさめている際中だった。ふと上の方から何かが移動してくるのに気が付いた。魔王岳中腹の方から猛スピードで走って下りてくるものがある。それはクマだった。

 

黒いクマが、Aめがけて走ってきた。

 

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最初の被害者A

 

逃げようとしたAの背中めがけてクマは腕をふりおろした。

 

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ぎゃああああ!

 

Aは肩から腹にかけて裂傷を負い、また左膝にも攻撃を受けた。

 

登山道でBとCを襲う

 

男性に重傷を負わせたクマはそのまま登山道に移動し、女性登山客Bを攻撃した。

 

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きゃああああ!

 

クマが女性の上にのしかかる。まわりの人たちが女性を助けようと石を投げつけるが、動じない。

居合わせた66歳の男性Cが持参した杖でクマを全力で殴りつけた。おかげでクマは女性への攻撃をやめたが、今度はCに襲いかかった。

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ぎゃあーっ!

 

たった一撃で男性は歯と右目を失った。

命は助かったが、顔と頭の数か所を骨折。

 

バスターミナルに広がる恐怖

 

畳平バスターミナルではクマの襲撃を受けて浮足立っていた。

ターミナルに隣接する宿泊施設「銀嶺荘」の経営者、59歳の男性Ⅾがまず動いた。そこにいた約50人の客に「ツアーで来ている方は観光バスに、その他の方は建物の中に避難して」と呼びかけたのだ。

 

この魔王岳にはクマが出没することは何度かあったが、目撃情報はさほど多くはなく、人的被害もこれまで無かったことから自治体が特に手立てを講じることもなかった。つまりスタッフでさえクマによる事故などはじめての事態であった。

 

Ⅾはクマという生き物の危険性を考え、自ら動いたのだ。

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観光客を安全な場所に誘導していると観光客がクマに襲われているのが目に映った。銀嶺荘の職員Eと共にクマの側まで接近し、音をたてるなどして威嚇した。

 

するとクマはEに襲いかかった。なんとあごに噛みついたのだ。

 

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うわああああ!

 

クマにたちむかう銀嶺荘の親子

 

地面に引き倒されて攻撃を助ける職員。Ⅾは部下を助けようとなおも音をたてたりして気をそらそうとした。

 

クマはⅮに襲いかかった。

その場に現れたⅮの息子、Fは父を襲い続けるクマを蹴りつけた。何度も蹴り続けた。

 

後にFはこの時のことをこう語っている。

「父親が死ぬかもしれないと思って必至だった。次にクマが自分を襲うことなど一切考えなかった」

 

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お父さんを助けようとして…いい話だ。

 

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ああ、襲われると分かっていてもきっと同じことをしただろうな。

 

顔をあげたクマ。

Ⅾへの攻撃はやんだが、今度は息子が危機にさらされることになった。

 

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う…うわ…

 

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クマがいきりたってFに襲いかかろうとしたその時。警備員が運転する軽トラックがFとクマの間に割って入った。

 

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おお! ナイスタイミング!

 

クマが戸惑っているスキにFは回りこみ、負傷した父親を抱えて建物の方に移動した。

職員と親子は結果的に助かったが、Ⅾは120針を縫う大怪我であった。

 

重傷を負ったEとⅮ、さらに…

 

この時、ターミナルに停車していた他の車やトラックも一様にクラクションを鳴らしてクマを退けようとしていた。

 

クマはトラックに攻撃するも、うまくいかないので、今度は環境パトロール員が集まる駐車場管理人の詰所にむかった。中にいた3人のパトロール員は慌てて外に避難。

この時、ひとりが機転をきかせて車を移動させ、詰所の前に停めた。

クマを建物に閉じこめたのだ。

 

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警察! 今のうちに警察をよんで!

 

救急ともに呼んでいるが、場所が場所なだけに時間がかかる。

 

この乗鞍岳バスターミナルは日本で一番たかい場所にある。

警察にしろ救急車にしろ呼んでも市街地のようにすぐには来れない。助けがくるまで、この場にいる者たちだけで被害者たちの怪我の手当も含めて対処するしかなかった。

 

クマよけのバリケードを築く

 

畳平バスターミナルには100人が避難していた。正面玄関には椅子や机で築かれたバリケード。

すぐそこでは人がクマに襲われている。いつこちらに来るか分からない。大きな不安と恐怖感に人々はふるえていた。

玄関にはシャッターがついていたが、まだ避難してくる人がいたため、おろすことはできなかった。

 

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でもクマはもう詰所にとじこめられたんだから安心だよね!

 

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クマ

それがな…。

 

がっしゃーん!

 

クマは窓を破って外に飛び出した。

そしてバスターミナルの正面玄関へ。

バリケードを破って100人の避難民の元に飛びこんだ。

 

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あああ

 

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パニックルーム

 

ツアー客を守ろうとした女性バス運転手がクマに襲われた。左耳をかまれて重傷。女性からクマを引き離そうとした従業員3名も引っかかれたり噛みつかれたりして負傷。

食堂はさながらパニックルームと化していた。

 

ふいにターミナル職員が消火器を使い、泡を噴射。

いきなりの反撃にクマは驚き、食堂を出て隣の土産物屋に逃げた。職員たちは食堂との間にシャッターをおろし、クマを土産物屋に閉じ込めることに成功した。

パニックはようやく落ち着いた。

 

その3時間後、警察から要請を受けてかけつけた高山猟友会丹生川支部のメンバー4人によって射殺された。

 

以上が乗鞍岳クマ襲撃事件の全容となる。

 

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なぜ人間を襲ったのか?

 

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ここからは何故クマが人間を襲ったのかを検証する。

 

射殺されたツキノワグマは21歳と高齢でした。体長は130cm、体重67㎏。

今までの事件と比べるとかなり小柄ですが、1頭で10人の人間を襲撃。わずか40分の間に3人に重傷を7人に軽傷を負わせた。クマの力の強さがわかります。

 

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熊ちゃん

ツキノワグマって大人しいんだよね? それがなんで?

 

なぜ人間を襲ったのか?

 

防衛本能から襲うことはある

 

よくいわれることですが、子連れのクマには注意しろ。

子育て中の母グマは警戒心が強く、子供を守るために人間を殺すこともあります。

たとえ人間に攻撃する意図がなくてもクマが何をもって脅威ととらえるかは私たちには分かりません。

 

海外では畑にあらわれた子熊にむかって飼い犬が吠えたことが原因で飼い主を含む3人が母熊に無残に引き裂かれた事件もあります。

人間が何もしなくても母親の防衛本能が働くことがあるということ。

 

ですが、件のクマはオス。子供を守るためという理由は成立しません。

 

稀に人間を食べることもある

 

クマは食べる物がなくても人間をエサとしてとらえることはありません。人間が食べられるものだと知らないからです。ただ何かのきっかけでいちど人間の味を覚えてしまうと人間を襲うようになってしまう。

 

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十和利山襲撃事件はそうやって起きたんだよね。

 

ただこれも今回は該当しません。

 

先述のとおり、この地域ではクマが人里を荒らすといったような事件はおきていませんし、解剖されたクマの胃の中からは木の実が出てきている。エサに困って人里に現れたわけではないということです。

 

ではなぜ襲ったのか?

 

専門家の見解

 

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こんな話がある。

 

事件が起きる少し前。最初にAとクマが遭遇した場所よりも上の方で。

山道を走行していた観光バスがこのクマを発見していた。

 

バスの運転手は「クマは山の上の方から走ってきた。上には観光客がいたようだ」と証言している。クマはこのバスに接触し、そのまま下方へと逃げていったという。

 

野生動物の研究者、森本萌弥氏は「山の上でクマが驚くような何かがあったのではないか」と推察している。

 

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▲乗鞍岳山頂

 

つまり観光客がクマに出くわして悲鳴をあげる。驚いたクマはその場から逃げ出し、山の斜面をかけおりた。

 

車との接触事故、さらにその後、フェンスにはさまって一時身動きがとれなくなったという。

必至で暴れてなんとか外れたものの、すでにこの時クマは恐慌状態に陥っていたと思われる。そのまま山をおりた先で最初の被害者のAさんとであってしまった。

 

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というのが森本氏の見立てだ。

 

パニックという名の負の連鎖

 

Aさんと遭遇してからクマは、人々に石を投げつけられ、杖でたたかれました。人間を敵とみなすには十分だったでしょう。

まわりは敵だらけ、普通なら逃げるところがパニックを起こしていてそれすらできない状態。目の前にいる敵を排除することしか考えられなかったと思われます。

時系列でみてもクマにとって落ち着くタイミングは確かに無かった。

 

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クマも災難だったんだね…。

 

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そうだな。気の毒ではある。

 

以上が記事の全てとなります。

 

 

 

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