今日はクマの動物研究初となる白くまによる獣害事件だ。
白くまって…動物園にいる?
いいえ。檻の中のクマではなく野生のクマです。
白くま、もといホッキョクグマは北極圏に生息している陸で最大の肉食動物。その生態については当サイトでも紹介したことがあります。
獣害事件は初めて。
襲われたのが大学生ということもありショッキングな内容となっている。閲覧には十分注意して頂きたい。
スヴァールバル諸島ホッキョクグマ襲撃事件
2011年の夏。北極のスヴァールバル諸島を訪れていた英国の探検隊のテントをホッキョクグマが襲い、若い学生らを含む4人が重軽傷を負い、1人が死亡した。
▼スヴァールバル諸島
Jerzy Strzelecki - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=3163182による
スヴァールバル諸島
この島でホッキョクグマに人が襲われて亡くなった事件は1995年以来だという。
3000頭のホッキョクグマが暮らすスヴァールバル諸島。北極圏に位置し、有するはノルウェー。
東にバレンツ海、西にフラム海峡をのぞむ群島。最大で唯一の有人島スピッツベルゲン島のほか、北東島、エッジ島など不毛の島からなる。
事故が起きたのはこのスピッツベルゲン島。
▼スピッツベルゲン島の町
CC BY-SA 1.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1860186
英国の青年探検隊を襲った恐怖
2011年8月5日。
スピッツベルゲン島を探検・研究活動の一環で訪れていた英国の若者たち。フォンポストブレーン氷河近くでキャンプイン。
13人の若者は就寝中に突然おそわれた。
テントを破って現れたのは体重250㎏のホッキョクグマ。
当時18歳だったパトリック・フリンダースはこのクマに頭を噛まれた。
必死でクマを殴りつけ、一命をとりとめた彼の頭にはクマの牙が残っていた。
彼の隣で寝ていたホレイショ・チャップル(17歳)がクマに襲われて死亡。
26日に葬儀がとりおこなわれた。
生存者が語る、襲撃時の恐怖
クマに襲われたパトリック・フリンダース。彼は後日、英国新聞紙の取材にこう答えている。
見上げるとー
巨大な口が見えた。クマの鼻のあたりは血に濡れていた。自分も死ぬかもしれないと…
クマの大きな脚で殴られ、肘のあたりを噛まれたという。その後に頭を噛まれた。
自分の頭蓋骨が割れる音を聞いた。
同時にクマのうなり声が彼の耳を貫いた。彼は何度もクマの頭をたたき、夢中で引きはがそうとしたという。
フリンダースを含め4人が重軽傷を負った。そのひとり、キャンプ隊のリーダー(29歳)が頭と顔にひどい怪我をおいながらもホッキョクグマを射殺。
事故の傷跡
報せをうけて航空機がスクランブル。
4人は手当てを受けるためノルウェー本土に緊急搬送された。
その後、フリンダースは頭蓋骨を20針縫い、前頭部に大きな傷が残った。左目は斜視になった。
しゃし?
ふつう物を見る時は右目も左目も両目とも見ようとする方向に向く。ところが片方の目が向いているにも関わらずもう片方の目が別の方向を向く。これを斜視という。
ホッキョクグマが牙をむいた理由
英国のティーンエイジャーたちが北極でホッキョクグマに襲撃されたこの事件。原因はなんだったのでしょうか。
後の調査でこのホッキョクグマは飢えにより大変狂暴になっていた可能性があることが分かりました。
飢えや怪我で気がたっている獣は非常に危険です。獣自身、自分が窮地に追い込まれているため常識が通用しません。
日本でも飢えたヒグマがある寒村を襲い、全滅に追いこんだ事件がありました。
ヒグマとホッキョクグマは祖先を同じくする縁戚。危険度は同じです。体格は後者の方がはるかに恵まれているうえにオスは同族の子供ですら食べてしまうという獰猛さ。
ヒグマ以上に危険といえるでしょう。
この事件で飢えた獣の鼻は人間の匂いをかぎつけたのかもしれません。
季節的に、青少年たちがキャンプしていた場所にホッキョクグマは現れないとのことでした。
ホッキョクグマ襲撃事件まとめ
今回はスヴァールバル諸島で起きたホッキョクグマ襲撃事件を紹介しました。当サイトでは野生のクマや他の猛獣による獣害事故事件を多数、取り扱っています。
ぜひご覧いただき、自然に足を踏み入れる際の情報としてお役立てください。