風不死岳ヒグマ事件/5人の死傷者を出す大惨事に

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この熊害事件をご存じでしょうか?

 

風不死岳ヒグマ事件

昭和51年、北海道風不死岳山麓山林にわけ行った人々が次々にヒグマに襲われ、5人の死傷者(2人死亡、3人が重軽傷)が出た。山菜をとりに入山していたため、特性として十和利山クマ襲撃事件に類似する。

 

クマ

今回はこのあまり知られていない風不死岳事件を解説するぞ

 

有名な三毛別羆事件などと比べると知名度は低いですが、死者まで出た重大事故です。

 

舞台は北海道。

風不死岳(ふっぷしだけ)と呼ばれる所。

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風不死岳はヒグマの出没が多い

 

風不死岳には熊のエサであるタケノコやミズナラ(どんぐり)などの山菜、ベリー類などの果実が豊富です。ヒグマは食べ物のある場所に拠点をおき、移動しながら生きるので基本的にエサのない所には現れません。

 

クマ

十和利山事件の同様の命を賭けたタケノコ争奪戦だ。

 

風不死岳ヒグマ事件

 

惨劇が起きた風不死岳(ふっぷしだけ)。

北海道千歳市にある火山で標高は1102.5m。支笏湖(しこつこ)を北にのぞむ。支笏湖は支笏洞爺国立公園に属する日本最北の不凍湖。

Mount Fuppushi seen from the NNE - panoramio.jpg

風不死岳/引用:ウイキペディア

 

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熊ちゃん

ふっぷしだけ。珍しい名前の山だね?

 

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クマ

ふっぷしとはアイヌ語で「トドマツのあるところ」という意味だ。

 

その名の通りトドマツの林に覆われた山でしたが、めずらしく北海道に上陸した台風で大量に倒れてしまい、今は景観が変わっています。元の面影はほとんどなく、名前だけが残っている。

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突然あらわれたヒグマ

 

1976年、6月4日午後2時半頃。

 

風不死岳9合目付近。

仲間5人とネマガリダケの伐採作業をしていた青森県の男性(56)が突然うしろからヒグマに襲われた。

 

男性はナタで応戦。

気づいて駆けつけた同僚の男性(45)も金テコをふりまわし、ヒグマを後退させる。

そのすきにケガをした男性を救出。

 

男性は病院に搬送された。

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熊ちゃん

助かったんだね。とりあえず良かった。

 

そう、この男性は助かりました。

人命が損なわれなかったのは幸いでしたが、問題はここから。

 

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人を襲ったクマは射殺されるんだよね?

 

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クマ

ああ、人ばかり襲うようになるからな。

 

実際にこのヒグマもこれ以降、人間をたてつづけに襲うようになります。

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人を追って再出没したヒグマ

 

警察から猟友会に出動命令が出る。

 

翌5日、午前7時からヒグマをとらえるために猟師5人が出動。風不死岳山中を捜索している最中に第二の被害は出た。

 

山麓の山林で山菜を採りに来ていた苫小牧市の男性(53)がヒグマにとつぜん遭遇。

※このヒグマは先の被害を出したのと同一個体と考えられている。

 

男性は刺激しないようにゆっくり後退したが、藪につまづいて転倒。襲いかかってきたヒグマに噛まれた。

一緒にいた親戚の男性(46)が木をゆするなどして追い払ったために全治2ヶ月ですんだ。

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この人はヒグマに遭遇した時の対処を心得ていたんだね。

 

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クマ

そう、クマにあったら絶対に背をむけて走り出してはいけない。殺られるからな。

 

しかしこの場合、すでに前日に人を襲っているので男性が藪につまづかなかったとしても襲われていた可能性が高い。

 

人を怖れて山の奥深くにすんでいるヒグマがわざわざ麓までおりてきて人間に遭遇した。偶然とは考えられません。

 

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熊ちゃん

人間を追っているってこと?

 

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クマは鼻がいいからな。人間が山に入ればわかる。

 

犬は人間の一億倍の嗅覚をもつといわれますが、ヒグマはその7倍の嗅覚。風上にたてば四キロ先にいるエモノの居場所が分かる。

 

  • いちど人を襲うと再び人を襲う
  • 匂いでエモノを追う

 

「人間を襲ったクマは射殺」と日本で決まっているのは、こうしたクマの習性や体質に基づいたものなのです。

 

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熊ちゃん

ここからはもう狩るか狩られるかのサドンデスだろ

 

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御推察通り。さあ、続きを見ていこう。

 

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血に濡れたタケノコ

 

同月9日。

栗山町や岩見沢市などから訪れていた4家族11人のグループが、ヒグマ出没警報が出ているにも関わらず入山。

お目当てはタケノコ。

 

集合時間の昼になっても58歳、54歳、26歳の男性が戻ってこないので、54歳の男性の長男(28)らが探しに山に戻った。

 

支笏湖畔の国道276号から150mほど山側に入ったところで26歳の男性が重傷を負って倒れているのを発見。

近くの貸しボート店に運び込み、通報を頼んで捜索に戻る。

 

負傷した若者は通りすがりの車で病院に搬送された。

 

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熊ちゃん

あああ、もう十割山事件の時と同じじゃないか

 

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タケノコ戦争は食うか食われるか

 

ほどなく北海道警察の署員12人と猟友会の猟師7人が到着。

残り2人の不明者の捜索を開始。

 

午後2時前に、26歳の男性が倒れていた所から約15mはなれた所で54歳の男性を発見。後頭部と両足を噛まれていてすでに死亡していた。

 

捜索隊が遺体を収容しようとしていると藪の中から突然ヒグマが現れた。

猟師3人が約5mの至近距離から一斉射撃。

ヒグマを射殺した。

   

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その後の捜索で、54歳の男性が亡くなっていた地点から約50m上手で、58歳の男性の遺体が発見された。

 

死後硬直の状況からこの男性が最初に襲われ、54歳の男性、26歳の順番で襲われたとみられている。

 

射殺されたヒグマは体重200㎏、体長1m70cm。2歳5ヵ月のメスヒグマ。

鋭い牙の間には人の髪の毛がからまっていたという…。

 

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熊ちゃん

ひいいいい!

 

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風不死岳ヒグマ事件まとめ

今回は風不死岳事件を解説しました。

 

  • 2人死亡
  • 3人が重軽傷

 

ヒグマが人を襲っているにもかかわらずタケノコ目当てに入山して死傷者が増えました。このあたり秋田で起きた十和利山クマ襲撃事件とよく似ていますね。

 

▼十和利のタケノコ戦争

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