るーるるーるるるるー。
クマが歌っています。
美しい歌声が室内に満ち満ちたりて。午後のティータイムの用意をしていた熊ちゃんの小さなお耳にも届きます…。
あちゃっ!
おや。どうしたのでしょう。
あんたがいきなり歌い出すからお湯をひっくり返したんだ。
ふふ、クマの美声にもクマったものだ。子熊ちゃんを動揺させてしまうとは…。
罪な歌声です。
カラオケに行っても、そう、皆よほど感動するらしく「声はいいよ」「うん、声は」とベタ褒めしてくれます。
いやそれ褒められてないだろ。
るーるるるーるるるー
コロナでもう2年ほどカラオケに行っていません。仕方がないのでハミング。
るるるー。というわけで今日は人を動揺させてしまう美しい歌声の持ち主について。
ドイツの川を渡る船乗りたちを魅了し、船舶を沈めてしまうというローレライの魔女。
▼ドイツのライン川
ローレライの魔女
ドイツの川に現れるという女の精霊の伝承。
ラインライト=プファルツ州のライン川。水面から130mほど突き出た岩山。
そこを通る船乗りが顔をあげると岩山の上に長い髪の美しい女性が座っているという。
引用:ウイキペディア/ローレライ像
彼女が歌うとあまりに美しさに舵を切り損ね、船は沈没してしまう。
ライン川を通る船をことごとく沈めてしまうという容赦ないセイレーン。
それがローレライの魔女。
▼ライン川のローレライ
本当に魔女なんて現れるのか?
さて、海難事故は実際に多かったようですよ。
ローレライの由来
古ドイツ語で「見る」「潜む」という意味のluenと、「岩」を意味するleyが合わさった言葉が由来している。
その名前のとおり、この岩山はスイスと北海をつなぐライン川の中で最も狭いトコロにあるため、流れが速い。また水面下に多くの岩がひそんでいるため、このポイントで事故が絶えなかった。
「魔の交差点」みたいなもんか
そう、地元の漁師たちには危険なポイントと認知されていた。
ローレライは航行の難所である
それがいつからか伝承が変化した。
岩山にたたずむ美しい女性が船頭を魅了し、船が川の渦にのみこまれる
これがローレライ伝説。
▼ローレライ
現在のローレライ
自分の腕の悪さを精霊のせいにしている…
そういう部分もあるかもしれませんが、現実に事故が多発していることから悪路であることは間違いなく、現代に至るまでに何度も川幅を広げる工事が行われています。
このライン川を船で下るツアーはドイツの観光名所となっていて、この岩山に向かって叫ぶと声が返ってくると評判でした。現在では川は大型船が就航できるよう拡張されており、岩山の上にはローレライセンターがあります。
世界のセイレーン伝説
ヨーロッパにはセイレーン伝説が多く存在します。
半人半鳥、人魚。その多くは女性化されています。
昔の船には女性はいません。女性を乗せると船が沈むといわれ、信心深い船乗りたちはそれを守っていました。
縁起が悪い=女性=セイレーンというイメージを生んだと考えられます。
数か月にもおよぶ長期の航海で女性がのっていると乗組員の間でトラブルのもとになるので上が嫌っていた、というのは想像にかたくありません。同じ理由で賭博も固く禁じられていました。
統制をとるために規律と恐怖が必要だったんだ。
なかなか寝ない子供に「早く寝ないと化け物がくるよ」と怖い話をするのと同じ。
じゃあセイレーンはおとぎ話なんだね。
さあ、それはどうだろう。
ケルトの文化が根付くドイツ。キリスト教の台頭により衰退した古代の神様たちは妖精に姿をかえて、今では童話の中で生きている。
ときおり伝承の中から出てきて悪戯をするかもしれません。
セイレーンの代表「人魚」の童話はAmazonオーディブルで無料で*1聴くことができます。
▲Amazonで
*1:初めての人は30日無料