今日は2019年に起きたオーストラリアの森林火災について。比較的最近おきた事件であること、世界中が息をのんで注視した、かつてない規模であったことから、覚えている方も多いと思います。
テレビで見た、人間に助けだされたコアラの弱々しい姿が印象的だったよ。
火傷を負い、消防士に水を飲ませてもらうコアラの映像は、痛々しくて災害の悲惨さが伝わってきました。
人間と多くの野性動物から住処を奪った大火災。
どのような経緯で大規模火災に発展してしまったのでしょうか。
右:消防士/左:火傷したコアラ
引用:huffpost
オーストラリアの森林火災
元々オーストラリアは森林火災が多い。
大陸の約19%が森林で、その他の地域も大半が砂漠と半乾燥地帯が占めている。
広大な自然と乾燥した空気。こうした自然発火を招きやすい環境により頻繁に火災が起きていた。
また害虫などが原因で枯れ木も多かった。
さらには海側からふく強風などで、燃え広がりやすいという特徴もあった。
引用:huffpost
揃いすぎた火災の悪条件
ほぼ毎年のように火災が発生していたが、特に2019年は悪条件が重なった。
- 記録的猛暑
- 記録的旱魃
- 落雷
- 放火
- 事故
- ダイポールモード現象
この年、降水量が観測史上最も少なく、空気が乾燥していた。平均気温も過去最高を記録。12月には記録的な熱波が到来。
12月なのに暑いの?
オーストラリアは南半球。日本とは季節が真逆になるんだ。
日本が冬の時、オーストラリアは夏。1年でもっとも気温が高くなるのが1月から2月で真冬は6月から7月ということになります。
日本と違い、夏でも空気が乾燥している。
火災がひどかった地域は元から夏の降水量が少なかったが、この年は旱魃をひきおこすほど雨が降っていなかった。記録的な暑さも加わり、森林は枯れていたという。
ダイポールモード現象って?
インド洋の海水温が高くなり、風や気象の変化が起こることだ。
強い風が起きたりするの?
そうー。火災が広がる条件が整っていた。
火災発生
2019年9月ごろから南東部のニューサウスウェールズ州を中心に森林火災が頻発。
夏季のピークとなる1月・2月を目にしてすでに被害は甚大。
ー2020年1月11日時点の被害ー
類焼面積10.700.000ヘクタール(日本の本州の約半分に相当)。
建物の被害5,900棟以上(うち2204棟が住宅)。
死者29人。
この火災がどれだけ大規模だったかよくわかる話がある
アフリカまで届いた煙
森林を焼き続ける大火災により、大量の煙が都市部を襲った。大勢の人が目やのどの痛みを訴え、市中はパニックに陥った。
煙はオーストラリアにとどまらず、海を越えてニュージーランドに到達。街の上空を白い靄がおおったという。
さらには太平洋を越えて12000㎞離れた南アフリカのチリとアルゼンチンに到達。ブラジルでも観測された。
アフリカ大陸まで届いたの⁉
火災で失われた生物たち
森林火災ゆえ、まず甚大な被害を受けたのはそこに棲む野性動物たちでした。
2020年1月8日に発表されたシドニー大学のディックマン博士によれば「哺乳類、鳥類、爬虫類など10億以上の生命が失われた」と推定される。
無事だった動物たちも今後エサの確保が困難になることから絶滅が危惧されている。
ACT政府が非常事態宣言
特にオーストラリア南東部(海側)での被害が大きかった。100件以上の森林火災が起き、一つの火事を消しても違う所から出火するというような状況だった。
タバコが原因の火事もあれば落雷もあったという。
夏だからね…なのに雨はふらないんだね。
他にも火をくいとめようとして野焼きをした結果、火災に発展したケースも。
多くの地域が火災をおさえようと奔走する中、南のビクトリア州では北東部~東部にかけて手がつけられなくなり、4週間にわたって燃え続けた。
1か月も燃えてたの⁉
やがて火は森を出て民家に及び、州政府は非常事態を宣言。
続いて1月31日にACT政府が非常事態宣言を発令。
火災に対応するための統合任務特別部隊を編成。陸海空軍が消防当局とともに被災者救援に当たるブッシュファイア(原野火災)アシスト作戦を発動。
軍が出てくるのか。これで何とかなるか?
ブッシュファイアアシスト作戦
空軍は各消防局が保有する消防車の運用をサポート。
陸軍は消防局と連携して消火活動に従事、ヘリコプター部隊をだして陸軍とともに物資の輸送任務にもあたった。
海軍は艦隊を出し、海から被災者を救援した。
2月6日、ニューサウスウェールズは待望の豪雨に見舞われ、火災の3分の1がわずか1日で鎮火。
2月14日ニューサウスウェールズ州の消防当局が「全ての火災を封じこめた」と宣言。
ようやく終わったのか…
この火災によって29人の尊い命が失われ、難を逃れた人々も住むところを失い、他の動物たちも甚大な被害をこうむりました。オーストラリアを代表する動物であるコアラは約5万頭いたうち約3万頭が死んだという。
一方で、世界中から支援が集まった。
東日本大震災のおりにオーストラリアから支援を受けた日本からは、航空自衛隊のC130機を2機、88人の隊員が送られ、人員や物資の輸送任務にあたった。
森林火災まとめ
今回はオーストラリア森林火災についてお話しました。火災で個体数をいちじるしく減らしたコアラについてはこちらを▼
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今回は森林でしたが、都市部でも大規模火災は起きています。世界最大の被害をだした江戸の町について▼