この記事は日本史上3番目に被害をだした熊害、十和利山クマ襲撃事件の後述です。
ああ…十和利山事件、怖かった…。
ツキノワグマが集団で人を食害するという事件は類がないからな。
ヒグマよりも体が小さいツキノワグマ。
食べる物も木の実などが多く、人間側が無用に驚かせたりしない限りは襲ってくることはない。少なくともこの事件が起きるまではなかった。
ならなぜ事件は起きたんだろう?
というわけで今回は十和利山事件を考察したいと思います。
十和利山事件はなぜ起きたのか?
十和利山クマ襲撃事件。
2016年(平成28年)、秋田の十和利山に入った人々が次々にクマに襲われた。タケノコを採るのが目的だったが、あることがきっかけで人間をエサと認定したクマたちは集団で人間を食べた。
4人が死亡、4人が重軽傷を負うという平成の日本で最も大きな熊害事件となった。
クマそのものが増えている
最近テレビやネットを見ていて、熊出没のニュースが多いと感じませんか?
実際に2019年は多かった。
2017年2018年が12000件程度だったのに対してこの年は20000万件越え。明らかに急増しています。
そして十和利山事件があった2016年も。
あっ、多い!
2016年は全国的にクマの出没件数が増えた年でした。
これは前年の2015年にクマの好物であるブナの実が豊作で出産頭数が増加したため。
つまりクマの数が増えた、山に入る人間との遭遇も増えたと。
十和利山に人が入ったのは何でだっけ。
これを採るためさ
そうそうアスパラ。
タケノコだ。
チシマザサ。稈(かん)の基部が弓状に曲がっていることから根曲がり竹。ネマガリダケともいわれる。
高麗笹、ササダケ、地竹、ササマゴともいう。
タケノコ狩りをする人間との衝突
この十和利山熊襲撃事件ではタケノコ狩りのために多くの人々が山に入り、熊に襲われました。
熊はきたる冬眠にそなえて夏から秋にかけて食べこむので、エサとなるタケノコを求める。両者が出会ったのは必然でした。
人間とクマで食べ物をとりあう図になってしまった。
最初に襲われた人々がどういう反応をしたのかは分かりませんが、もし悲鳴をあげたり急に逃げ出したりしたら…。
クマはどうするでしょうか?
追いかけるね。そういう習性なんでしょ。
そう。クマは犬と同じで背中をむけて逃げ出す生き物を追いかける習性がある。
たとえ食事中であっても。
本能に突き動かされての行動なので、これはクマ自身にもどうすることもできないのです。
そして追いかけっこになれば人間は確実に負ける…
クマは時速50キロで走るからね。
だからクマに出会ったら背を向けない・いきなり走り出さないのは鉄則。
なんですが…。
こういう知識はクマが警戒していてこそ役に立つものであり、十和利山事件中盤では意味をなさなかったと思われます。
最初の事故で人間の血の味を覚えた十和利山事件のクマたちは警戒するどころか、エサと認識していたからです。狩りの対象がタケノコから人間に移行していた。
こうなると逃げようが留まろうが結果は同じだ。
人間を食べる気まんまんの熊たち。
彼らの住処に人間が入っていく。
この事件で最も問題なのはわれわれ人間が「自分たちがクマにとってのタケノコになっていることに気がついていなかった」という点です。
人間が山に入るのをやめなかった
警察や自治体による規制がかかり、「危ないから山に入ってはいけませんよ」と何度も言われても「わたしは大丈夫」と聞く耳をもたなかった。
「わたしはクマに出会ったことがないから大丈夫」
………。
理由になっていないが、まあ、そのくらい出会う確率が低い生き物であったのだろう。
この事件が起きるまでは。
怖くないのかなあ?
毎年のようにタケノコを採りに行っている人であれば「数十年なにもなかったのだからこれからも大丈夫」と思うのかもしれません。
また被害者の中にはクマよけの鈴を持っていた人もいました。
えっ、なのに襲われたの⁉
これも先ほどの「背中をみせて逃げない」という不文律と同じです。
熊よけの鈴はクマが人間を怖れている正常の状態でこそ効果を発揮するもの。
人間をエサと思っているクマが人口の音を聞けばどうするでしょうか。
まあ…駆けつけるよね。
そう、魔よけの鈴が逆に魔物をおびき寄せる原因になってしまった。
いちど人間を食べた熊は再び人間を襲うようになる。そうと知っていれば被害者たちは入山しなかったかもしれません。
十和利山事件の考察のまとめ
前述のとおり人間はタケノコを求めて山に入ります。そしてクマという生き物は食べ物がある場所に留まり続けますから、十和利山で事故がたて続けに起きたのはそういう理由からでした。
この「クマの動物研究」の読者様であれば、熊の恐ろしさについてはよくお分かりだと思います。
登山や山菜採りなどで入山予定がある場合は自治体の情報を集めるようにしたいですね。クマが多い東北~北海道ではクマへの注意喚起がなされていると同時に遭遇した場合のマニュアルや、遭遇しないための出没予想などが発表されているので事前にチェックするようにしましょう。
出没地域を予想できるの?
クマの好物であるブナやどんぐりの実が落ちている場所から専門家が予想するんだ。
環境省のホームページでもクマについての詳しい情報を載せています。クマに遭わないために、自分や仲間の身を守るために情報を収集しましょう。
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