チンパンジーのブルーノ

クマの動物研究がお送りする動物事件シリーズ。
今回はチンパンジーです。

「チンパンジーって人を襲うの? 相手はサルだし、せいぜいひっかかれるくらいでしょ」と思われるかもしれません。

日本人に馴染みがある小さなおサルさんとチンパンジーはぜんぜん違います。

遠く離れた異国の地で1人の男性が命を落としました。それも無残な形で…。


チンパンジーのブルーノ

チンパンジーのブルーノは大変残酷な事件です。苦手な方はここで離脱いただき、読み進める場合は閲覧ご注意ください。

事件の概要


ブルーノとはシエラレオネ共和国に存在する大型のチンパンジーの固有名詞(名前)。
2006年に人間を殺害し、仲間のチンパンジーらと共に複数の人間を意図的に襲わせて重傷をおわせてその後、姿を消した。2021年現在も逃走中。

シエラレオネ国


シエラレオネ共和国は西アフリカの西部、大西洋岸に位置する。イギリス連邦加盟国。首都はフリータウン。約10年以上続いた内戦とHIVによる影響で世界で11番目に平均寿命が短い国(WHO報告)となっている。これはそんな状況を背景に起きた事件。

内戦で疲弊しきった国


国民の一部は子供のチンパンジーの子供を捕獲し、売ることで外貨を得ていた。母子のチンパンジーを捕獲すると商品価値の低い親は殺してしまう。
政府はチンパンジーを守るために保護区を設定したが、無計画な森林伐採によりチンパンジーが人々から隠れることが難しかった。

ブルーノが生まれた日


ブルーノが人間と出会ったのは1988年。
保護区の経理担当職員アマラセカランとその妻シャルマイラは首都の北部150㎞に位置する小さな村で、幼い動物が売られているのを見つけた。
親と引き離され、弱りきっていたチンパンジー。
夫妻は彼を保護するため20ドルで購入した。

このチンパンジーは夫妻に買われていなければ、すぐに衰弱死していただろうとみられている。

夫妻はその子に元気になってほしいという願いから英国のヘビー級ボクサー、フランクブルーノにちなんで「ブルーノ」と名付けた。

隔離されて育つ


数年間、夫妻はブルーノを自宅の檻で育てていた。
二匹目のチンパンジー、ジュリーを引き取り、手狭になったので庭の檻の中にいれた。

その後、動物の保護地が設営されるも、ブルーノは大きくなりすぎていたので他のチンパンジーとは別の檻にいれられた。
彼は成獣となるまでに多くの場面で隔離されて育った。

動物を隔離して育てるのはリスクが高い。彼が事件を起こしたいくらかの要素はここで生まれたのかもしれない。

1998年、電気フェンスで囲まれた鉄の囲いが設置され、ようやくブルーノは別のチンパンジーたちと共に、この中に開放されることになった。

巨体のブルーノ


しかしこの時すでにブルーノは体長180cm、90㎏越えの巨漢に成長していた。他のチンパンジーが平均で体長85cm、40~60㎏であることを考えると彼は明らかに巨躯である。

それでいて優れた運動能力をもっていて人間に対して物やフンを投げつけ、それを的確に当てたりした。強靭な肉体とリーダーシップによってブルーノはボスとして群れの上に君臨していた。

頭がよすぎるブルーノ


チンパンジーたちの住処は電気の柵と二重の鉄製のフェンスによって囲まれていて、扉には複数のカギがついていた。
複雑な開錠操作が必要になるため、チンパンジーには開けられないと思われていた。

が、2006年。ブルーノは人目を盗んで鍵を手に入れ、いくつもの鍵を開けてしまった。人がやっている所をみて学習していたのだ。
彼は仲間を連れて保護地から脱走した。


当初、職員たちはブルーノたちは野生にかえったのだろうと楽観的にとらえていた。だが人の手によって育てられたチンパンジーがそうやすやすと野生の集団に溶けこめる筈はなかった。

チンパンジーは頭がいい。故に恨みをもつのだ。


恐ろしい襲撃事件


2006年4月ー。

保護区から約3キロ離れた所に新しい米国大使館が建設されていた。
建設現場に入っていたキャドル・コンストラクション・カンパニーに派遣されていた3人のアメリカ人労働者。

アラン・ロバートソン。
ギャリー・ブラウン。
リッチ・ゴッディー。

その日、彼らは朝から地元のタクシーで移動していた。
車の中には他にシエラレオネ人のメルヴィン・ママーとタクシー運転手のカヌーがいた。

5人をのせたタクシーは森林の側を走行していた。
ふと藪を抜けたところで誰かが気づいた。
チンパンジーの群れが自分たちをみていることに。

アメリカ人の労働者たちは物珍しさから写真をとろうとしたが、運転手のカヌーはチンパンジーの危険性を熟知していたので。

「すぐ窓をしめろ!」

急いでその場を離れようとした。
しかし、チンパンジーの恐ろしさをよく知っていたがゆえにパニックを起こして運転操作を間違えてしまい、保護区のフェンスにつっこんだ。
車体が鉄製の檻にひっかかってしまい、抜け出ることができなくなってしまった。


ブルーノは拳で車のフロントガラスをたたき割った。
運転席からカヌーを引きずり出すと、首根っこをつかまえて頭を地面に何度もたたきつけ、失神させた。
手足すべての爪をはがしてからすべての指をかみ切って切断。
それから生きたままの彼の顔面を食いちぎり殺した。

惨劇を目の当たりにした4人は車をおりてバラバラに逃げ出した。が、チンパンジーの群れにあっけなくつかまってしまう。

チンパンジーたちはどうやら自分たちにひどいことをしてきた現地人(黒人)と外国人(白人)の区別がついているらしく、シエラレオネ人のママーは腕に重傷を負わされた。病院に運び込まれたが、切断手術が必要であった。

現地政府が対応に


この事件はすぐに政府の知るところとなった。
いつもは対応の遅いアフリカ政府であったが、被害者の中に経済援助国であるアメリカの国民が含まれていたため、慌てて対応にのりだした。

すみやかに警察隊がチンパンジーたちの捜索に取り掛かった。
だがブルーノたちを見つけることはできなかった。

恐ろしい事件を聞き、恐怖する地元民たちはチンパンジーたちがつかまらないことに対するいら立ちを警察隊へと向けた。
何度か小規模な暴動が起こり、警察隊は空砲を空にうつなどして対応。

住民の安全を確保するために、警察隊は森林をコンバインで刈り取り、居住区との間に緩衝地帯をもうけることにした。
保護当局はジャングルのいたるところに赤外線カメラを設置。

脱走劇の結末


人の手によって育てられた動物が自然で生き抜くのは難しいらしくチンパンジー9匹は自発的に戻ってきた。

結果的に27匹は捕獲されたが、4匹は2021年現在も未だ捕らえられていない。その中にはブルーノも含まれる。

ブルーノまとめ


この記事ではチンパンジーのブルーノをまとめました。
当サイト「クマの動物研究」では過去に起きた動物による事件をいくつも取り扱っておりますので、どうぞご回覧ください。




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