最近クマの話題が何かと取り上げられるようになりましたね。例年9~10月はクマによる人身事故が増えるので、ニュースで見る機会も増えるのですが、今年はそれに加えてもうひとつクマ関連の話題が広がっています。
なぜ殺したの!
クマが駆除されたというニュースへの反発が目立っています。
いわゆるアンチ・クマ駆除派ってやつね。
秋田県では人里に出た熊を駆除したことで地元自治体への苦情の電話が集中しているとして知事が会見する事態になっています。
なぜこんなことになっているのか。
秋田県の件を詳しく紹介するとともに「クマが可哀想」という人々の中にはクマのことをよく分かっていない人も多く見受けられたので、ここできちんと説明していきます。
「クマが可哀想、なぜ殺すの」と思われたらぜひ読んでください。
秋田県での苦情の電話
11月8日、秋田県の牛舎で40代の男性がクマに襲われて骨折。災難中の幸いというべきか、命に別状はなかった。
10日には午前中に測量作業をしていた男性がクマに襲われて左腕を噛まれて、これで今年秋田県内でクマによる被害は67人と過去最悪の数字になった。
こういうクマは駆除されるんだよね?
ああ、血の味を知ったクマはまた人を襲うからな。
急増するクマ。駆除したというニュースが全国に流れるたびに、秋田県の自治体に抗議の電話やメールが集中した。
かわいそう
駆除しないで
作業小屋にクマ3頭が入りこみ、駆除した秋田県美郷町には300件の抗議の電話がかかってきたという。
まあ気持ちは分かるけどね。
クマが可愛いから殺さないでほしい。
殺さずに山に返してあげて。
そういう声に対して「山に返してもまた戻ってくる。作業小屋の近くには認定こども園もあり、住民の不安が強い」という背景があると町。
秋田県の対応に賛否
秋田県の佐竹知事は抗議の電話に対して「すぐに切る。ガチャン。電話は乱暴。業務妨害。話しても分からない」と言い切った。
クマを駆除しなければ地元住民が危険な目に遭います。知事が県民の命と安全を守るために行動するのは当然のこと。
それも分かるけどさ、駆除せずにすむ道ってないのかな?
そう考える人が多いのでしょう。クマを麻酔銃で眠らせるなりして山に返してあげてほしいという声も多い。
30件クレーム電話の女性「地元のことは分からない」
クマを駆除した行政に30件の抗議の電話をかけたという女性の記事を紹介します。
クマ駆除に抗議電話30件…女性を直撃「人の責任だ」秋田知事「感情論多い」【詳細版】 - ライブドアニュース
抗議した女性:当たり前のように馬鹿みたいに(クマが)来たら殺す。それしかできないのっておかしい。みんな野生の生物って癒してるわけじゃない。クマは怖い汚い恐ろしいというイメージを植え付けられている。悪者じゃないよ、そう思わない?
秋田県では67件のクマによる被害が出ています。
抗議した女性:もともと人の責任でしょ。自然を破壊して今に至っているわけでしょ。結局、人が手を加えてそういうことをしているから野生の生き物の生きる場所がなくなっているんですよ。
抗議した女性は親子のクマは山に返してほしいと。麻酔銃でおりにいれたら静かにしている。その間に運んで山に帰してほしいと自治体に伝えたそう。
麻酔銃を撃つ獣医師さんが危険にさらされるんだろ?
取材をしたアナウンサーが「自治体によると死者が出ているが?」と聞いたところ女性は。
急に襲われるということも恐ろしいけどね、番犬、だいたい番犬。山に近い所にお住まいの方って番犬飼っておけば犬が騒ぐと分かるじゃない。
家の敷地にもう来てるじゃん。愛犬が食べられる数秒前だぞ。
女性は最後にこう言った。
そう言いながらも、私は実際のところ、都市部に住んでいるから、農村部に住んでクマの被害におびえている人の気持ち、分からないところもあるから、なんか自分でも微妙」
どこに住んでいるかは関係ない。理解しようとすることが大事だ。
感情はともかく、そこで何が起きているのか、クマという生物について調べて知ることは都市部にいてもできます。
そこでクマについて「なぜ駆除するのか」「駆除しないとどうなるのか」「捕獲できない理由」についてひとつずつ説明するのでぜひご覧ください。
クマが可哀想と思ったら
SNSで色んな意見をみていて思ったのだが、「なぜ駆除するのか」という意見が多い。
クマ駆除を支持、または容認する人々は「なぜ」とは問いません。
クマの恐ろしさをよく理解しているからです。
「なぜ駆除するのか」と憤ったら、なぜ駆除するのか調べてみてください。納得できるかどうかは人によりますが、少なくとも「なぜ」という言葉は出てこなくなります。
あなたはクマについてどの程度、知っていますか?
- 撃たれてもなかなか死なない
- 筋肉の塊
- 人間を食べることがある
- 犬の七倍の嗅覚で狩りをする
- 食べ物への執着心が非常に強い
- 人を食べるとまた人を食べる
- 悲惨な事故がいくつも起きている
なぜ熊を殺すのか?
なぜクマを殺すのか、という疑問にはこれまでも記事を書いてきました。
山にクマのエサとなるドングリをばらまけば市街地におりてこなくなる、麻酔銃で眠らせて山に帰せ、などの意見に対してそれができない「理由」を明記しています。
「麻酔銃で眠らせて山に返せ」は幻想
麻酔銃で眠らせるのはリスクが大きいんだよね。
麻酔銃は法律の問題もあり、扱える人間が限られています。猟師さんや警察官でも資格がないと持てません。
ふだんクマを撃たない獣医師さんがクマに相対する。
危険が大きすぎるのです。
命中したところで麻酔が効くまでに時間がかかるため、射手の安全を考えると、クマがオリにかかった状態でないと撃つのは難しい。
「どんぐりを山にばらまけ」は愚の極み
クマのエサを山にばらまけばいいという人もいたね。
どんぐりなどを山にばらまけばエサを求めて市街地におりてこなくなるという意見がありました。それをやってしまうと「野生のクマ」を殺すだけでなく、生態系に大きな影響をもたらしかねないという記事。
「秋田県民に死ね」という人々
そのクマを駆除しなければ地元住民に被害が及ぶと判断して自治体は動いている。その自治体に「クマを殺すな」というのは結果として「地元住民が被害に遭っても仕方がない」というのと同じです。
実際、秋田県は電話をしてくる人の中には、応対に出た職員に対して「死ね」と言う声もあったと明かしました。
そこまで考えずに「ただクマが可哀想」というだけで電話する人もいるでしょう。
自分だったらどうだろう。
クマの被害にあって今年は2人の方が亡くなりました。
それが自分の家族だったら。
抗議の電話はできるでしょうか。
問題解決のためには
どうすればいいんだろう。
クマの駆除を容認する人々と反対する人々。どちらも根幹は同じです。平穏に暮らせるようになってほしいと願っている。
ただ人間社会である以上、人命が最優先です。それが行政の義務でもある。
できることはある。
クマが市街地におりてこないようにするには山を保全する、森林伐採を止める、人里と山の間に緩衝地帯を作る、クマに関わらない、山に食べ物を捨てない、など。
クマを守る活動をしている団体の中にはクマのために山を購入しているところもあります。クマが人に関わらないように、都市と山の間に空白地帯を作ること。エサがなる山をこれ以上削らないように守ること。
不満をぶつける前にできることがある。
まず、そうと知ることから始まるのではないでしょうか。