なぜ熊を殺す? 足を撃ちぬけばいいのに

なぜ熊を殺すのですか? 可哀想じゃないですか! 命までとらなくても足を撃ちぬけばいいのに。

 

 

さあ「なぜ熊を殺すのか?」

第二弾でございます。

 

なぜ熊を殺すんですか? 可哀想。命までとらなくても、足を撃つかして動けなくしたらいいじゃないですか!

 

日本では熊が射殺されると必ずといっていいほど、こういう意見が出ます。

 

これに対して、SNSやニュース記事のコメント欄には「頭の中がお花畑」「熊のことを、一㎜でもいい、調べてから喋ってくれ」「熊のプーさんじゃねえんだぞ、アホか○○○○ユー」というような苛烈な反対意見がずらりと並びます。

 

 


ヤフコメやはてブはヒートアップするよね。

 

クマ

みなさん言いたくなる気持ちはよくわかるが、そこは冷静に説いてあげてくれ。

 

なぜ熊を殺さなければならないのか?

足を撃って弱らせてはどうなのか?

 

本記事ではこれらの疑問に冷静に答えていきます。

記事を書いたのは「クマの動物研究」運営者のクマ。

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熊がゴキブリだったら「駆除するな」とは言わないでしょう?

 

人はなぜ熊を殺すのでしょう?

 

そう。

駆除目的です。

 

市街地におりてきた熊は害獣になるので、山に追い返すか、無理なら射殺ということに。

 

熊ちゃん

そんな! あんなにもふもふコロコロして可愛いのに!

 

それです。

 


えっ?

 

それが原因。

 

熊を殺すな、可哀想。

訴える人の多くは「ぬいぐるみのような見た目が可愛い」のです。

 

ツキノワグマにしろヒグマにしろ厚い毛皮に覆われているた。

チワワを大きくしたようにみえるのでしょう。

 

ゴキブリのような見た目だったら、どうでしょう。

わざわざ猟友会に電話するでしょうか?

 

「なぜ殺したの‼」

 

動物愛護団体も騒ぐでしょうか。

 

「気の毒よ‼」

 


しないね、きっと!

 

人間は哺乳類ですから、体温の高い生き物に愛情を抱きます。犬や猫を可愛いと感じ、気温に体温が左右される昆虫や爬虫類を冷たい生物と感じる。

とくに虫は毒をもっていることも多いので本能的に嫌う人が多いのです。

 


ゴキもアレルゲンだもんね。

 


そう、一部の人にとっては毒と同じだ。でなくても多くの人は好きではないだろう。

 

「可愛い」という人は熊の毛皮を愛しているだけ

 

ところで、なぜ熊はあんな可愛い見た目をしているのでしょう?

 


なぜって…理由があるのか?

 

もちろんです。

万物、進化をたどった末に今の姿をしている。

過酷な自然を生き抜くために必要なものは磨き、不必要なものは捨ててきた。

 

もふもふしているのは寒いから。

冬の寒さを耐え抜くために厚手の毛皮をまとっている。

 

しかしご存じでしょうか。

毛皮の下には隆々の筋肉がついていることを。

 

熊という生物は筋肉の塊です。まるっとしているので太って鈍そうな生物にみえますが実際には俊敏なハンターです。

 

海で人喰いザメに遭遇するのと同じ。

狙いを定められたら人間の足で逃げ切ることは不可能です。

 


熊はとても足が早いんだよね。

 

そう。

でこぼこな山道でも自動車並みの速度で走ることができるので、国立競技場で走らせたら世界新記録をたたきだすのは間違いないでしょう。

 


な、なんで追いかけてくるんだ?

 


犬と同じで逃げる者を追いかける習慣があるのだ。

 

さて。

追いつかれたらどうなるのでしょうか?

 

 

追いつかれたら人生エンド

 

こちらをご覧ください。

過去100年間に起きた主要な熊害事件です。

 

  • ロシアのメンブラー
  • 米国のグリズリーマン
  • マイソールの人喰い熊
  • 中国のパンダ
  • スヴァールバル諸島ホッキョクグマ襲撃事件
  • 三毛別羆事件
  • 石狩沼田幌新事件
  • 十和利山襲撃事件
  • 札幌丘珠事件(明治)
  • 札幌丘珠事件(令和)
  • 福岡大学ワンゲル部ヒグマ事件
  • 風不死岳ヒグマ事件
  • 秋田八幡平クマ牧場事件
  • 乗鞍岳クマ襲撃事件
  • OSO18
  • 札幌三角山クマの巣穴調査事故
  • 漆黒のRT
  • 長野クマのぺっぺ

 

下記からすべての熊害事件を読むことができます。

cumacuma-cuma.com

各事件の概要を知れば「どうなるのか」がよく分かります。

 


く、熊が恐ろしいのはよく分かった。市街地におりてくるとアブナイのも分かった。でも…。

 

 

やっぱり殺すのは可哀そう。

 

そういう意見は多いです。

 

そもそも熊が市街地におりてくるのはエサを求めてのこと。

自然を破壊し、山をけずり、彼らのエサと住処を奪ってきたのは我々です。

それは間違いないです。

 

このうえエサを求めて里にやってきた熊を撃ち殺したのでは、「むごい」といわれても仕方がありません。

 


足を撃って動けなくすればいいんじゃないかな…もしくは麻酔銃で眠らせるとか。

 

なるほど。

動けなくなったところを捕獲して山に返せと。

 

ではこれらの方法が可能なのかを見ていきましょう。

 

  • 自由を奪う
  • 麻酔銃で眠らせる

 

足を撃ったくらいではビクともしない

 

まずは「熊の身体を撃ち、弱ったところを捕獲する」という方法について。

 


足を撃ちぬけばいいよ! 動けなくなるから

 

果たしてそうでしょうか。

 

かつてひとつの村を壊滅させた熊嵐。

警官隊の一斉放射を受けながら、雪山を元気に逃げ回ったという。

 

人間は撃たれれば弱りますが、熊は必ずしもそうではないということです。

 


何で⁉

 

分厚い筋肉と脂肪が盾の役割を果たすのです。

 

銃弾が命中しても内臓や血管を傷つけない。

 

体を撃ったからといって動きが止まるわけではなく、むしろ怒らせてしまうだけで射手の死亡率を高めることになりかねません。

 


熊を殺すには脳幹と心臓、どちらかを正確に撃ち抜く必要がある。

 


脳幹…頭だね。

 

それはとても困難です。

 

熊の頭蓋骨の前頭部はつるんとしていて、銃弾がそれてしまう。

 

たとえ銃弾が頭に当たったとしてもかすり傷で終わることもあり、脳を撃ちぬくことは至難のワザ。

 

熊のハートを撃ちぬけるのは猟師だけ

 

次に心臓。

 

心臓を撃ちぬくには二つのタイミングがあります。

ひとつは熊が立ち上がっている時。ツキノワグマで言うと月の輪のあたり。

 

もうひとつはクマの側面から撃つ時。

左脚のつけねの横、肋骨のあたりを狙います。その下に心臓があるからです。

 

先に説明した通り、熊は足が速いので100mくらいであれば数秒で詰めてきます。その間に的確に狙いを定めて急所を撃ちぬく必要がある。

 

巨大な魔物を前に冷静に狙いを定める。

外したら待つのは死。

そんな切迫した状況で的確な射撃ができるのは熊撃ちの猟師だけ。

 

ゆえに熊が出ると警察は猟友会に出動要請を出します。

 


警察の手にも負えないのか…。

 

世界最悪のヒグマ熊嵐は200人の警官隊でも倒せなかった。

仕留めたのはたったひとりの猟師。

 

伝説のマタギ山本兵吉は、巨大ヒグマをたった二発の銃弾で仕留めました。弾はそれぞれ頭と心臓を的確に撃ち抜いていたという。

 


猟師さんてすごいんだな。

 


そうだな。次は麻酔銃だ。

 

麻酔銃を使えるのは動物園にいる獣医師だけ

 

麻酔銃で熊を眠らせることはできないのか?

この方法にはいくつものハードルがあります。

 

まず日本で麻酔銃を使える人が限られているということ。

 

麻酔銃は銃ですから鉄砲所持許可がいります。

そして麻酔ですから、麻薬研究者などの許可も必要になる。

 


早い話、ほとんど使えないということだ。

 


法律的な制限があるということか。

 

大きな獣を眠らせるような量の麻酔銃。

人間に当たったら死にますからね。

取り扱いには多大な責任がともなうゆえに誰でもというわけにはいきません。

 

よしんば銃弾が熊に当たったとしても、麻酔が全身にまわるまでには時間がかかる。

 

小さな名探偵が麻酔針を撃って即座に人を眠らせていますがあれは漫画の中だけの話。現実ではああはいきません。

 

麻酔が効くまでの間にやはり射手は攻撃を受ける可能性が非常に高いので、人命を守るという観点から選択肢になりえません。

 


熊を捕獲するのは難しいんだな。

 

そうです。強いがゆえに傷つけずに捕獲することは難しく、人間の安全を守るには射殺するしかない。

 

残念ながらそれが実情です。

山に返しても問題解決にはならない

 

仮にうまく生捕りにして山に帰したとしても、また里におりてきます。

 

人間の食べ物を口にした熊は変わります。

 

野山に現生するすっぱい果物より人間が育てた甘い果物の方が美味しい。品種改良されて私たちが美味しいと感じるものは熊も大好きなのです。

 

熊は食べ物に対する執着心がとても強いのでいちど甘い味を知ってしまったら戻れなくなる。

 

我々人間にできることは

 

今回は「なぜ熊を殺すのか」「生かして逃がせないのか」という疑問に答えてみました。

 


解決策はあるのだろうか。

 

前回の記事でものべた通り、熊が里におりてこないように、人間側が気をつけるしかありません。

 

とくにヒグマが生息する北海道を訪れる観光客がやりがちな行為。

 

熊をみかけたからと、写真をとったり、近づいたり、触れたり、エサをあげたり。

 

クマ

人に慣れきった熊は危ないと判断され、それだけで駆除される。

 

本州では熊が住んでいる山に「立ち入り禁止」の札を踏みつけて山菜欲しさに入っていく。

登山やハイキングで食べ物を山に捨てる。

テントの中に食べ物を置く。

 

こういう行為を人間がやめることが肝要です。

 

知らない人がいたら教えてあげてください。これらはクマに人間の食べ物の味を覚えさせる行為なのだと。

 

美味しい食べ物を得るために人里におりてくるようになるのだと。

 


我々が気をつけることが、熊の命を守ることにつながる。

 

熊が可哀想だと嘆くほかに、彼らを守るためにできることはあるはず。

 

それが何なのか、調べることが第一歩になります。

 

 

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