いま北海道羅臼町を震え上がらせている事件をご存じでしょうか? 住宅街に現れ、飼い犬を次々に餌食にしている黒い魔物。地元住人は「漆黒のRT」と呼んで恐怖しています。
事件の発端
2018年8月、海岸町という海沿いの町で、民家の庭先で飼われていた犬がヒグマに襲われて死亡した。食べ残しを土に埋めていた所を住人に見つかり、ヒグマは逃走。白昼の惨事に町は震撼した。
引用:ウイキペディア
これ以降、同じ個体により町内の飼い犬が次々に襲撃される。
翌19年の夏には海岸町から離れた春日町で飼い犬が襲われる。この頃からRTと呼ばれるようになっていきます(参考記事:週刊現代)。
漆黒のRT
現場に残された体毛などから11才以上のオスと推定される。
痕跡を見た猟師の話では「体重200㎏ほど」だといい、体毛が黒いため、道内では漆黒のRTと呼ばれる。
RTって?
この個体が初めて目撃されたオホーツク管内・斜里町(しゃりちょう)ルシャ地区にちなんでつけられたコードネームですね。
3匹の飼い犬を襲ったRT
春日町を騒がせた2019年から約1年間、RTは姿を見せませんでした。
それが2021年6月、再び人里に現れて凶行に及びます。
うちの飼い犬が目の前で…
飼い主によると、その夜、庭から鳴き声がけたたましく響いたという。
何事かと窓の外を見るとそこにはヒグマがいて犬に覆いかぶさっていた。家族が窓ガラスをたたいたり爆竹を放り投げたりして威嚇するも、黒い生き物は意に介さず食事を続けた。
通りすがりの車が気づいてクラクションを鳴らすと、ようやくそれは去っていった。
残酷な表現は避けるが犬は無残な姿になっていたという。
ヒグマはエサのあるところに戻ってくる習性がある。飼い犬が襲われたこのお宅は一家で別のアパートに退避した。
クマは食べることに強く執着する。これは三毛別羆事件をみてもらえばよくわかります。
日本史上最悪のヒグマ事件か。
三毛別羆事件
冬眠しそこねた巨大ヒグマが民家の軒先で食料をあさっていたところを住人の女性に見つかったのが、悲劇の始まりでした。
人間への復讐にかられたヒグマ
漆黒のRTに関しては今のところ人的被害は出ていませんが、なぜか飼い犬ばかりを狙っています。
なんで飼い犬を狙うんだろう?
地元猟友会によると(冒頭の記事参照)、RTの母親は12年に駆除されている。これはRTの体毛などをDNA鑑定した結果、判明したことで、当時こどもだったRTは母親の最期を間近で見ていた可能性が高い。
肉親を目の前で撃たれた子熊の中に、人間への憎しみが生まれたー。
人間が飼っている犬を狙うのは人間への復讐ではないかと考えられている。
山にエサがない、とは考えられない?
知床半島はエサが豊富です。陸には脂肪たっぷりのエゾシカが多く生息しており、すぐ側にはオホーツク海。海岸には魚がうちあげられますし、いざという時には海に入って漁師の網にかかった魚を獲ることもあります。
【MIKIOジャーナル】知床 海を泳ぐクマ - YouTube
よほど困窮したとしても人里におりるのはヒグマにとってはリスキーです。熊という生物は生まれた時から親に「人間は得体がしれない怖い生物」と教えられるので向こうから近づいてくることは基本的にありません。
RTの異常な行動を地元猟友会は「人間への復讐が目的ではないか」とみている。
自治体の目をかいくぐり犯行を重ねるRT
RTはどうすることもできないのでしょうか。
被害が出ているわけですから、むろん自治体やハンターたちが後を追いかけています。
今は捕食の対象が飼い犬であっても、そのうち人間に変わらないとは限らない。
それだけは絶対に防がなければとクマの住処と住宅街の間に罠を設置したり、捜索したりしていますが、RTは捕まらない。まるで人間の行動をあざわらうかのように追跡を逃れながら犯行をくりかえしています。
オソといい北海道には怖いクマが多いんだなあ。
オソ18は未だに人に直接その姿をみられたことがなく、静かに犯行をくりかえす500㎏越えの巨大ヒグマです。
この2頭をはじめ、北海道は深刻な問題に直面しています。
2021年、12人もの人々がヒグマに襲われて犠牲になっている。これは統計開始以来過去最多。
追記:7月11日ー
osoがついに御用となりました。
6月30日に海岸町で捕獲箱にかかっていたヒグマ。駆除された後、北海道大学によるDNA鑑定で騒がれていた「漆黒のRT」であることが確認されました。
一連の事件はこれにて終息したことになります。
というわけで漆黒のRTについての解説でした。当サイト「クマの動物研究」ではヒグマやツキノワグマの事件を多数扱っています。