今週のお題「怖い話」
三毛別羆事件・後半です。
🌫🌫🌫前回のあらすじ🌫🌫🌫🌫🌫🌫🌫
大正時代、現在の北海道にて。開拓民の村がヒグマの襲撃を受け、幼い子供と女性が犠牲になりました。家族を殺された太田家をはじめ、村全体が深い悲しみと不安に包まれる中、厳かにとり行われた通夜。しかし、そこに再びヒグマが現れ、一転その場は緊張に包まれます。結果的にヒグマは怒りに満ちた人々に追い返されましたが、その後…。
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目次
ラストチャンス
もしどこかで惨劇をくいとめることができたとしたら、この時がラストチャンスだったのかもしれません。
現代の動物学者がここにいたら、通夜の前に全村人を連れてすみやかに避難していたでしょう。また可哀想ですが、熊の食糧庫から奥方の遺体を取り戻してはならないと教えたでしょう。
村人達はそうと知らずに、ヒグマを呼び寄せてしまっていたのです。
通夜の席に現れた人間たちの憎き敵。
殺人熊はなぜ現れたのか?
続きをご覧ください。
明景家の惨劇
(めいけいけ、みようけとも読む)
通夜に参列した人々に追い払われたヒグマは、そのまま沢をくだります。辿り着いたのは灯りのともった民家…。
女子供が避難する明景家。
時刻は夜の9時すぎー。
男たちがヒグマ対策に奔走していて不在になるので村の女子供たちはこの家に避難していました。中には妊婦もおり、彼女たちを守るために太田家の家人も詰めておりました。彼が武器を持っていたのかどうかは定かではありませんが、どのみち暗闇では使いようがなかったのではないでしょうか。
ヒグマは突然、現れました。
避難させたつもりが裏目に出たのです。ほとんど女子供ばかりで、熊には格好のエサ場。男もいましたが、成獣のヒグマにとっては人間の性別など関係ありません。
牛ですら一撃で撲殺するという強大な力の持ち主です。猟銃でもあればまた話が違ったかもしれませんが、もしあったとしてもこの時は役には立たなかったでしょう。
明かりが消えたからです。
突如現れた巨大なヒグマに、人々はおののき、混乱の中でランプの灯が消えてしまいました。
暗闇に襲われる明景家。
人々は逃げ惑い、悲鳴があがります。
運悪くヒグマに捕まった女性たち。
地獄絵図
この襲撃では女性2人に子どもが2人、胎児も合わせて5人が命を落としました。なお、太田の家人もヒグマに重傷を負わされ、この時は助かりましたが後に亡くなっています。
その後、ヒグマは報せを受けて駆けつけた警察や軍隊によって山に追いこまれ、最期は猟師によって退治されました。
北の地を心肝からたらしめた事件は、こうして終息したのです。
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ヒグマの研究
この凄惨を極めた三毛別羆事件はのちに専門の学者たちにより分析され、熊の恐るべき性質を裏付ける材料となりました。
火を恐れない
事件発生後、村民はヒグマ対策に火を焚いており、避難先でも多くの焚火が燃やされていました。「野生動物は火を怖がる」からです。
しかしヒグマの場合、太田・明景両家の襲撃にみられるように灯火や焚火などに拒否反応を示さなかった。火を恐れないのです。
執着心が強い
ヒグマは自分のもの、とくにエサに対して強い執着心をみせる。
事件はこの定説を裏づけています。
太田家の奥方を食害した際に食べ残しを雪に隠したこと、太田家に何度も出没したことなど。その一方で馬への被害は皆無だった。このヒグマは女の肉の味を覚えてしまったのです。
ゆえに明景家でも女ばかりを狙った。
逃げるものを追う
明景家で熊にかじられながらも生き残った女性と子どもがいる。彼女たちが九死に一生を得た理由はヒグマが逃げる他の人間に気を取られたためであり、このようにたとえ捕食中であってもヒグマは逃避するものを反射的に追いかけてしまうのです。
死んだふりは無意味
明景家の惨劇において無傷だった子どもたちが他にもいる。気絶して床に倒れた子どもと、結果的には助からなかったが、胎児はヒグマに攻撃されなかった。
これは、ヒグマが動かないものを襲わないというわけではなく、ただ他に食べる物があっただけ。
大人の女性を好んで食べた可能性がある。
事実、妊婦を襲ってはいるが、胎児には手をつけなかった。
一度人の味を覚えた個体は危険
一般に熊は人を恐れます。
できれば会いたくないし、会ったら早く逃げたいと思っている。
人を襲うのは突然、人間と出会ってしまった時。
恐怖心から襲う。
得体のしれない人間という生き物が恐ろしいのです。
だから身を守るために急に襲いかかることがある。
それを防ぐためには鈴などを鳴らして人間の存在をむこうに知らせる。そこに人間がいると分かれば近づいてはきません。もっといえばクマのいる山に入らない。これがいちばんです。
クマと人間の意図しない鉢合わせ。
これにより恐ろしいのは驚いたクマが慌てて人間を攻撃し、学習してしまうことです。
「人間って弱いじゃん。てか、食べられるじゃん?」
クマは学習能力が高い生き物です。いちど人の味を覚えると「人間は弱くて簡単に手に入るエサ」と認識するようになる。
そして人間ばかりを襲うようになります。
だから一度でも人間を襲ったクマは射殺されることが決まっているのですね。人間社会の側からすれば致し方のないルール。むろんクマ側からすればたまったものではありません。
住む土地を追われ、森林伐採でエサも少なく、食べ物を求めて山をおりたら人間に殺される。
生きるためにエサを探しているだけなのに。
ご飯を食べたい。ただそれだけなのに。
やりきれない気持ちになりますが、わたしも人間のひとり。社会の築いた安全対策の上で安穏と暮らしている身では何も言えません。
いかがでしたか?
わたしはなんだか、実話を紹介しているというよりもホラーを書いているような錯覚に陥りました。最後は考えさせられる部分もあり、今はドキュメントな気分です…。
三毛別羆事件については化け物並みに巨大な熊、執念深く何度も人間を襲う。怪奇映画のようで純粋に恐ろしいと思いました。
実際に北海道であった話なんですよね…。それが怖いです。
本日はここまで。
ご購読ありがとうございました。
他にもヒグマやサメの事件についての記事がありますので、こちらの⇩特集ページからご覧ください。
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